2024年1月27、28日の一泊二日の合宿形式で行われたガーデンキュレーター即戦力キャンプ。2021年に始まり4回目となる今回は、スタッフ含め、緑を愛する総勢26名の多様なメンバーが集い、協会設立に向けた機運が大いに高まりました。

イベントを主催するのは、「日本初のガーデンキュレーター」と自ら名乗り活動を続けてきた、株式会社Q-GARDEN代表の小島理恵。塾長は愛植物設計所会長の山本紀久さん。会場は内山緑地建設さんの圃場である、君津グリーンセンターの一部「内山ガーデン&アーボリータム」です。現在は、「きみつの散歩道」として整備され、誰でも無料で見学できる庭園として公開されています。

これまでのキャンプでは、園内での実習作業の時間をとっていましたが、今回は、座学での講座形式がメインです。市民と自治体との協働事例の紹介や、国や大学、民間企業が主体となって行われた環境再生の事例など、規模感や地域の違うさまざまな仕事が紹介されました。発表者はそれぞれの現場で、既にガーデンキュレーター的なはたらきをしている方々です。

今回のキャンプのテーマ、山本紀久さんの著書で、キャンプ参加者の課題図書とされている『造園植栽術』第7章、

 ■植物の遷移を読み込んだ管理
 ■時間を味方にした景観づくり
 ■庭師の技が風景の価値を高める

 について、同じ志をもつ仲間と共に学ぶ時間は、多くの刺激や示唆に満ちていました。

地域や市民の力を生かす 官民連携の事例

1日目、最初の発表者は、東日本大震災後に石巻市北上町で立ち上がったまちづくりの団体、一般社団法人ウィーアーワン北上代表の佐藤尚美さん。津波で失われた集落の環境再生を住民主体で行う「平地の杜プロジェクト」の紹介がありました。

平地の杜プロジェクトは、技術指導をNPO法人地球守の高田宏臣さんに依頼して、住民参加を呼びかけ、ワークショップ形式の施工会を実施。土中環境の改善を行い、水脈を再生させるための石積みにも挑戦したそうです。作業で出た土、草、剪定枝、石なども他所に持ち出すことなく循環させて、美しく、居心地の良い場所を目指し、土地を育て直しています。

参加者がわざわざ参加費を払って施工会での作業に汗を流しているところに、地域への想いや熱意を感じます。さらに、その後の手入れを継続するために、「きたかみ園芸部」を立ち上げ、定例の作業日を設けているそうです。「プロジェクトを通じて、造園経験のない私たちスタッフが、造園土木や緑化作業の楽しさに目覚めた」と、佐藤さんたちが参加者と共に活動そのものを純粋に楽しんでいることが伺えました。

国や、コンサル会社が進める復興の在り方とは違い、住民に寄り添い、その気持ちや力を後押しして共に行動する佐藤さんたちのはたらきは、キュレーター的であり、「造園業が本来持っている良さが感じられる」と、参加者から賞賛や共感の声が寄せられていました。

ランチを食べたあとは、山本塾長による園内巡りのワークショップの時間。景観を見るときには、遠近や高低差を考えるといった基本の話も、実物を見ながらだと、より深く体感することができます。

昨年のキャンプで、剪定実習したカイヅカイブキや、一昨年の実習で作られたバイオネスト、2021年の第一回目のキャンプの際に、かなり大胆に剪定された楠が良い樹形を保って再び青々と茂っている姿からも、人の手が入ることで、心地よい環境が保たれることを実感できました。

ちなみに、大手町タワーの「大手町の森」の植栽は、この圃場で3年間の森づくりの実験を経てから移植されました。大手町の森は、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる「ネイチャーポジティブ」というゴールに向けたモデルの一つとして、環境省の自然共生サイトにも認定されています。

ワークショップ後は、花苗の生産や卸販売等を行う株式会社サンガーデンの土谷美紀さんが関わっている、北海道恵庭市の花の拠点「はなふる」の事例が紹介されました。土谷さんが30年以上花のまちづくりを自治体と進める中で、2022年にオープンした「はなふる」は国道36号線にある道の駅を含む都市公園。メインとなるガーデンエリアには、北海道を代表するガーデナーが趣向を凝らした7つのガーデンがあります。

「計画の段階で、講演会を依頼していた山本先生に書いてもらったポンチ絵(エリアのゾーニングや植栽の配置イメージ図)を原案として、ゾーニング計画が進んでいきました。現在、まちづくり会社(株)ガーデンシティが全体の運営管理を統括し、緑と植栽部門は「恵庭まちづくり協同組合」が担っています。サンガーデンはここに組合員として加わっています。はなふるができて3年。行政・管理者・実践者・設計者が情報を共有し、現場を見ながら問題点を洗い出し、解決を図る『ウォークスルー』という手法を試みています。」と土谷さん。これまでガーデナーや役所とのやりとり等、まちと人、自然を丁寧につなぐ役割を担ってきた経験から、ガーデンキュレーターの存在や役割が、まちづくりにおいて、必要不可欠だと感じているそうです。

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