ガーデンキュレーター×AI?!

作業を終えて、2日目の午後からは筑波大学芸術系名誉教授鈴木雅和先生による講義です。

「もしガーデンキュレーターがAIを使ったら?」という尖ったテーマで、午前の疲れからくる眠気もいつの間にやら吹き飛び、笑いと驚き、感嘆の入り混じる刺激的な時間となりました。

最初に鈴木先生から概要を聞いた後で、最新版の生成AIのChatGPT4.0を使い、実際に動かしながら使い方を学びます。ガーデンキュレーターの仕事を助ける「ガーデンアシスタント」というキャラクターを新たにつくり、膨大な環境調査の資料を要約させたり、トンボ池周辺の特性と管理の手法などのアイデアやアドバイスをもらったり、植栽デザイン案を出してもらったりしました。

ChatGPTは元々が日本の技術ではないので、絵を描かせると西洋的な風景になってしまいがちです(右上)。そこで日本の横浜市で、谷戸の地形であること、入れてほしい木の種類などを設定することで3回目くらいで実際の風景にかなり近づきました(左下)。しかし、次にバイオネストを入れるよう指示したら、バイオネストの形も全体の風景も、予想を裏切り一風変わったものになってしまいました(右下)。

それでも、これだけの絵をわずか数分で描き、修正対応も素早いとなると、アシスタントとして非常に優秀であることには間違いありません。「コンペの下案をいくつか出したい時にいいかも」、「現場にいく前の課題整理にいいね」など、使い道を既に考え始める声も聞こえてきました。AIにいい仕事をしてもらうためには、いかに的確な質問や指示を出せるか?が肝。機械的な指示だけでなく、褒めたり、「そこをなんとか」と、もう少し踏み込んでお願いしたり、感情的なやりとりも案外大事なようで、総じて向き合う人間側の態度や言葉の重要性がよく分かりました。

鈴木先生には、実際にある植物園の詳細のデータをとって仮想空間に再現し、その、もう一つの植物園で企業等とさまざまなシミュレーションを試みて「社会植物学という新しい学問領域を生み出したい」という、さらなる展望があるそうです。

ガーデンキュレーター即戦力アップキャンプでは毎回1日目の夜に希望者を募っての懇親会が行われます。「先生と参加者、スタッフ、地元の方も混ざって、楽しく且つ真面目な仕事の話で盛り上がれるのも重要なコンテンツの一つです」と主催の小島理恵さん。
座学での講義と、現地調査、現場作業と、頭と身体両方使っての充実の2日間。今回は動画の撮影スタッフも入りました。ガーデンキュレーターの仕事を全国で作っていくために大切な知見として、キャンプに参加できなかった人にも何らかの形で共有されるはずです。
作業後のランチの時間も楽しみの一つです。

「やっぱり美味しく食べられるってことが大事だよね」。最年長84歳ながら好奇心旺盛で、誰よりも軽々動きまわり、作業も講義も楽しんでいた山本先生がおっしゃっていましたが、ランチのお弁当にも開催地横浜ならではのこだわりが。崎陽軒のシウマイ弁当(1日目)と赤飯弁当(2日目)と食事の用意にもキュレーションが効いていました。

取材・執筆:森ノオト(梅原昭子)