「饗宴(きょうえん)」で理念共有を行うシンポジウム

設立総会を終えた後は、小島さんがこだわった「本来的な意味でのシンポジウム」へと移りました。シンポジウムの語源である古代ギリシア時代の「饗宴(きょうえん)」を意味するギリシア語「シュンポシオン(symposion)」。美酒と美食を囲み、楽しい会話を交わしながら、「創造的メンテナンスのための仕組みづくり」をテーマにシンポジウムを行いました。

シンポジウムの進行は、千葉大学大学院の園芸学研究院准教授の竹内智子さん(写真左)。まずは登壇した4人で乾杯を行い、「小島さんの協会設立に向けた熱い語りをどうぞ!」とマイクを向けました。

小島さんは改めて協会のビジョン・ミッションについて語りました。「ビジョンは、全ての緑地をガーデンと捉え、あらゆる緑地を本質的に豊かにすること。ミッションは、①すでにある緑地のバリューを高める、②分断されている業界、知識に横串をさす、③女性ガーデナーの新たな活躍の場をつくる、④発注する側と受注する側の双方のリテラシーを向上すること」。会場からは共感の拍手が沸き起こりました。

続いて、コミュニティガーデンのコーディネート業務を行う有限会社スマイルプラス代表取締役の木村智子さんは、ご自身の活動紹介とガーデンキュレーターの親和性について語りました。「私たちの仕事は、一般の人も含めたガーデンに関わる人みんなでコンセプト、デザインを決めて、アクティビティをみんなで楽しめるようサポートすること。合意形成に一般の方が関わることで、ガーデンに愛着をもち、積極的にガーデンに関わってくれるようになります。話し合いの場の調整役やアドバイスを担うのとともに、植物の維持管理行為を市民が丸ごと楽しみながら最終的に根ざしていくことです。一般の公園にもガーデンキュレーターが広がっていくのではないか」と話しました。

続いてマイクを持ったのは、長野県松本市にある株式会社柳沢林業代表取締役の原薫さん。林業を生業として里山の維持管理を行う立場から、松枯れの課題や里山保全の現場について語りました。「私たちの里山活動のフィールドは、以前農業に必要な資材を調達するための農用林でした。石油資源が使われるようになると人手が入らなくなり、山は荒れるようになりました。追い打ちをかけるように松枯れが広がり、この地域では松の伐採を進めました。一方で、馬を飼うことを喜んでくれた地域の方々と、荒れた里山を再び切りひらき、牧場を整備しながら、フィールド管理を中心としたコミュニティが形成されています。人が手を加え続けることで、土地もどんどん気持ちよい場所になるだけでなく、自然との関わりの中で人も元気になっていくことを実感しています。これからの時代の人の関与を考えると、里山というフィールドもひとつのガーデンと捉えられるようです。新たな切り口で、仲間を増やし、日々の暮らしの中に「里山」が当たり前になるといいなと思っています」と話しました。

横浜市では2027年に「2027国際園芸博覧会(GREEN×EXPO 2027)」が開催されます。2027国際園芸博覧会から推進戦略室長の脇坂隆一さん(写真左)が挨拶しました。「地球温暖化、生物多様性など、地球規模の課題が叫ばれる中でどうやって“幸せ”を作っていくのかが博覧会のテーマです。ネイチャーポジティブ、カーボンニュートラルというコンセプトを掲げつつ、園芸博としてメインガーデン、里山ビレッジなど、花いっぱいのガーデンをつくります。さまざまな市民参加があるなかで、ガーデンキュレーターへの期待は一言では言えないくらいたくさんあります」と期待を寄せました。

シンポジウムの司会を務めた千葉大学大学院の園芸学研究院准教授の竹内智子さんは、「次世代にランドスケープの職域を広げていきたいですし、ガーデンキュレーターは本当に必要とされています。木を育てるだけでなく人を育て、さらに環境にもやさしい世界が実現できそうです。私はずっと行政の都市計画・造園分野で、調整や工事の監督をやってきました。予算、政策、人材育成の部分を陰ながら支えていきたいです。今日は学生も連れてきました。若い人に夢のある仕事をつくっていくために、ぜひ頑張っていただきたいです」とまとめ、未来への期待感を述べました。

会の最後は、山本塾長の挨拶で締めました。

「今、会社に依頼される国や自治体からの仕事の多くが、60年前に急拡大した緑化木の大樹化、老齢化による倒木や落枝などの増大や、木本類の過密化による公園機能の劣化などに対する管理対策に関わるものです。その傾向は10年ほど前から見られ、この数年は特に顕著です。その背景には、植栽整備時代から管理主体のステージに入り、全体予算の縮減に伴う造園職員の減少が顕著になり、現在では全国約1,700ある国や自治体の中で、造園関連の専門職が在籍しているのは、わずか数カ所と言われています。またその人たちも人事異動があることから、常に変化していく管理作業に適切に対応した、管理内容を伝達指示できる人がほとんどいないのが実状です。一方、実際に造園植栽管理に関わる専門家は、本日お集まりいただいた方々を始め、多くの方々が全国で活躍しておられます。本協会は、全国の自治体や同様の課題を抱える企業や施設などを対象にして、みどりの管理対策に関する適切な監理監修の役割を果たせるガーデンキュレーターとして活動したい人材を全国に紹介していくことが役割と思っています」

港町・横浜で出航したガーデンキュレーター協会は、さっそく翌日には「ガーデンキュレーター即戦力キャンプ・2025冬」として、追分市民の森で実践編を開催しました。全国から集うガーデンキュレーターたちが、切磋琢磨しながら技術を磨き、情報と知見を共有していく。そして、日本中に多くの人に愛されるガーデンをつくり、ネットワークしていく。質の高い緑の環境づくりがここから始まります。

シンポジウムでご挨拶をいただいた方々

株式会社URリンケージ一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会高橋和嗣さん高橋和嗣さん

一般社団法人日本造園建設業協会の技術アドバイザー・野村徹郎さん

一般社団法人ソーシャルグリーンデザイン協会 会長 小松正幸さん

一般社団法人ランドスケープコンサルタンツ協会 会長 金清典広さん

一般社団法人ジャパンガーデンデザイナーズ協会 大滝暢子さん

私の森.jp 赤池円さん

全国女性造園技術者の会 山崎誠子さん

一般社団法人ランドスケープアーキテクト連盟 大橋尚美さん

一般社団法人日本造園組合連合会 参与 井上花子さん

ガーデンデザイナー 吉谷桂子さん

あゆみデザイン 梅木あゆみさん

(取材・執筆:認定NPO法人森ノオト 北原まどか)